林一穂【消え入りそうな声で殴りかかる天使】

林一穂:声が夜の隙間からやってくる

美しいアルペジオに幕を開けた林一穂のショー。
声がきしむ。声が這い回る。生き物の香りが薄いガラスのような歌声で、描きだされるショートストーリー。
カヒミカリイや相対性理論、ハイポジなどが切り開いた「冷たいロリーターボイス」と形容される声を一番の武器としながらもさらに、ストーリーテラーとしても一流だ。
林一穂は彼女にしか書けない歌を書く。
北欧の冷たい童話のように青く光る世界を。

せっぱつまった感情が裏にあるとしても、壁を壊して爆発するのではなく、染み出してくる。
シミはいつか人の形になり、彼女とは違うキャラクターを演じ始める。

闇の世界は、暗くない。
ただ、光が目立たないだけで。

 

林一穂:熱じゃない、熱さ。

愛の形をした、別のもの。
暴力の形をした愛。
許しと諦めと、期待と苛立ち。

林一穂の描き出すキャラクターはどこか歪んでる。
恋人も、親子も。
水面に映る月のように歪んでる。美しい世界を描く方法として彼女は現実にフィルタをかける。

現実は怖い。現実は痛い。現実は悲しい。
でもその暗さ、怖さはどうしようもなく人を惹きつける。

彼女の歌には「その世界に飲み込まれたい」と思わせる甘さがある。

彼氏を殴る彼女の歌。
お母さんに虐待される子どもの歌。

私は私を見失う、と彼女は歌う。

僕らの世界には、確かにあるはずの事象。
本来ポップミュージックはそんなことにも光を当てて僕らに見せる役割がった。
ビートルズも、ディランも。
マリリンマンソンも、スザンヌヴェガも。

林一穂はある意味、世界レヴェルのポップスを産んでいる。
彼女の心に住む作家は、彼女の理想の世界と現実世界とのズレによって生まれたのかも知れない。
恐ろしい作家性だ。

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林一穂:声を使う。ギターを鳴らす天使。

声が神様のギフトだったり、類い稀な作家性も才能かもしれない。
でも林一穂はギターの弾き方にも細心の注意とアイデアを注いでる。
テンションや開放弦を使った凍りつく和音や
イントロで爆発したストロークは、歌が入るとバッキングに回るし、ボリューム調整をする。

作品を提示するためのアイデアを具現化するために必要な努力をする。

今まではずっとホームタウン山口を中心とした活動だったらしい。
戸川祐華など、山口には個性的なアーティストを生む空気があるのか。

闇を持ち、闇に住み、闇を歌うんだけど。
心はちっとも闇に染まってない。

山口にはきっとそんな天使たちが住む洞窟があるんだろう。
夜になるとギターを持って歌う天使。
か細い声で、気付かれないように。

今、一番天使に近いのは「林一穂」だ。
福岡のみんな。覚えていて損はない。
いつか彼女があなたの隣に滑り込み、魔法をかけるだろう。

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